Q.3輪バイク技術『LMWテクノロジー』とは?【初心者でもわかる】
2018/10/14
この記事の目次
LMWテクノロジーとは?
画像出典:ヤマハ公式サイト
ヤマハが提唱するLMWテクノロジーは、モーターサイクルのように傾斜して旋回する3輪以上の車両の総称のことです。
LMWとは、リーニング・マルチ・ホイール(Leaning Multi Wheel)の略です。
- 2014年9月に発売された「トリシティ125」を皮切りに、
- 2017年1月には「トリシティ155」
- 2018年内に発売予定の「ナイケン(NIKEN)」
にも採用されています。
現在ラインナップしている3車種は、前二輪・後一輪のレイアウトとなっています。
LMWの道路交通法上の扱い
道路交通法では、トライクにおける特定二輪車という扱いになります。
車体を傾けないトライクの場合は普通自動車免許で乗ることが可能ですが、リーン(傾斜)させて曲がる3輪バイクについては自動二輪免許が必要です。
つまり、
- トリシティ125は「小型二輪免許/AT限定小型二輪免許」
- トリシティ155は「普通二輪免許/AT限定普通二輪免許」
- ナイケンは大型二輪免許
の取得が必須となります。
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ヤマハの実証実験で明らかになった3つの要素
画像出典:ヤマハ公式サイト
LMWの最大の魅力は、ライダーにかかる負担が少ないことです。
ヤマハが行った実験により、LMWのもつ3つの要素によってドライバーが疲れにくいことがわかりました。
- 車体安定感が高い
- 視野が広い
- 精神的負担感が小さい
下記から詳しく見ていきましょう。
LMWの特徴①:車体安定感が高く、転倒しづらい
LMWは、車体の安定感がとにかく高いといえます。
特に従来の二輪では、旋回進入時や切返し時は荷重バランスが不安定になりやすく、ライダーの技量が問われます。しかし、LMWは旋回進入時などの不安定な状態であっても、タイヤ性能を効率よく引き出してくれます。これらのシーンでも、ライダーは安心して運転することができます。
通常の二輪と比べても安定感が全く違う
LMW(トリシティ)と、通常の二輪(同エンジン、同車格のスクーター)を比較した実験が行われています。
実験はクローズドコースで、
- 直線
- スラローム(カラーコーンや旗といった障害物の間を通り抜ける)
- 旋回
など、さまざまなシチュエーションで行われました。
この実験において、通常の二輪と比べてLMWの方が車体は安定していて、特にコーナー時にはブレが少ないという検証結果がでました。
LMWの運転は疲れにくい!?Fact 1『何故なら安定しているから』
不意の強い横風にも強い
二輪で走行しているとき、ふいの強い横風で車体がフラついてヒヤリとしたことはあると思います。
LMWは前二輪が車体の安定性を向上させているので、走行中の強い横風にも強くなっています。ヤマハの実験では、テストコースをプロライダーに風速約15m/sで二輪とLMWで走行してもらい、どちらの走行安定性が優れているか比較しました。
LMWの横風の影響による車両のフラつきは、二輪よりもかなり少ないことがわかりました。
旋回中の前輪ブレーキ時も車両の挙動が穏やか
コーナリング中に止むを得ず止まらなければならない場面があったとき、ライダーにとっては非常に難しいシチュエーションにあるといえます。
しかし、LMWは前輪慣性モーメントが大きく、旋回時に前輪のブレーキをかけたときでも車両の起き上がる挙動が穏やかになることがわかりました。つまり、LMWは車体コントロール性に優れているといえます。
慣性モーメントとは?
ある軸の周りに回転する物体が、同じ回転運動を保ち続けようとする慣性の大きさを表す量のことです。
大きくなるほど、回転運動の変化を起こさせにくいとされています。
LMWの特徴②:視野が広く、危険を察知
LMWはほかにも、視野が広いという特徴をもっています。
前輪が二輪ということでゆとりのある走りが可能になり、走行中における対象物の視認物の認識方法が従来の二輪車とは異なることがわかりました。
二輪車の場合、頭部を動かして対象物を認識するという特性がありますが、LMWでは頭部より先に目が動いて障害物を認識することが判明しています。
補足:有効視野とは?
必要なものを識別できる視野範囲のことで、「周辺視野」とも呼ばれます。
当然、有効視野が広いほど周囲の存在的な危険を認識する能力が高くなるので、安全にバイクに乗れるということになります。
有効視野に関するヤマハの検証実験
通常の二輪車と比べてLMW乗車時の有効視野角は広く、周辺の状況を把握しやすくなっています。
ヤマハの検証実験では、ライダーの視点データ検出と頭部の動きを計測できる特殊なグラスをかけてバイクを運転しています。
走行中の視点と頭部の動きから有効視野を計測、視野の広さを通常の二輪とLMWで比較しています。
結果は、二輪よりもLMWの方が頭部運動先行率は低いことがわかりました。
有効視野が広がることで、ヒューマンエラーの主な原因である「認知の欠如」が起こりにくくなり、安全だけではなく運転自体も楽しくなると考えられています。
LMWの運転は疲れにくい!?Fact 2『何故なら視野が広いから』
LMWの特徴③:精神的負担感が小さく、疲れづらい
LMW運転時は通常の二輪と比べて、ライダーの精神的負担が小さくなるとも考えられています。
精神的負担感が小さいことで、肉体的な疲労だけではなく精神的な疲労も軽減されるといわれています。つまり、通常の二輪よりも運転時に精神的な余裕が生まれているということになります。
実験はNASAが開発した指標で検証
NASAによって開発された精神的作業負担感を測定する方法「NASA-TLX指標」に基づいて運転時の精神的負担を、複数人のプロフェッショナルライダーより採取した実験が行われました。
結果は、「知的・知覚的要因」「身体的要因」「タイムプレッシャー」「作業成績」「努力」「フラストレーション」の6指標のうち4指標の値が小さくなっていました。
これにより、LMWは通常の二輪よりもライダーの精神的な負担が少ないということが証明されたことになります。
LMWの運転は疲れにくい!?Fact 3『何故なら精神的負担が小さいから』
さらに詳しい検証動画
ヤマハは上記以外でも、LMWに関するさまざまな実験を行っています。
詳しくは、以下の動画から確認することができます。
LMWテクノロジー実証動画2018
【注意!】立ちゴケはする
安定感のあるナイケンですが、立ちゴケはしてしまうので過信は禁物です。
ナイケンはサイドスタンドなので、楽に車体を起こすことはできます。
また、そこから車体を押したりステアリングを切って車体を回しながら押したりすることも、重量の割には苦になりません。
3輪だから立ちゴケしにくいように思われる人も多いようですが、ナイケンは絶対に転ばないバイクではありません。
ナイケンの車重は236kgもあるので、停車したときに足が出なかったら、バランスを崩して立ちゴケしてしまうこともあり得るのです。
取り回すときは、まっすぐ引き起こすことやステアリング角度を意識することを欠かさないようにしましょう。
画像の丸山浩氏は国際A級ライセンスを取得しているだけあって、小柄でありながら圧倒的な取り回しの良さやバランス感覚を見せてくれます。
すごい勢いで深くヘビー級のナイケンを倒して、途中で止めて戻すのはもはや神業の領域ですね。「さすが!」の一言に尽きます。